建築と歴史で二度楽しめる港区立郷土歴史館

今回はちょっと趣を変えて、白金台に新しくオープンした「港区立郷土歴史館」を紹介したいと思います。

去年、2018年11月1日に開館したばかりの施設なのですが、戦前の建築を極力残しながら現代の公共施設としての機能も持たせるというコンセプトがこれからの公共施設のあり方に影響を与えそうな素晴らしい施設になっていました

1938年(太平洋戦争直前)に建設された旧・公衆衛生院の建物を数年前に港区が取得、改修し港区の様々な機能を集約した複合施設としてオープンさせました。

以前から白金台の駅の裏に何か建物があるなぁ、何か工事しているなぁと思って見ていたのですが東大医科学研究所の施設だとばかり思い込んでいてノーチェックだったのです。完成してびっくりですね。

ちなみにその郷土歴史館に隣接する「東大医科学研究所」の初代所長は新しい千円札の顔になることで再注目されている北里柴三郎博士です。

ネオ・ゴシック調の建物は内田祥三(よしかず)による設計。「内田ゴシック」とも呼ばれる建築パターンで有名です。

この旧・公衆衛生院、どこかで見たような気がしますね。
そう、東大のシンボル的存在でもある安田講堂。あの安田講堂も内田祥三による設計なのです。

Yasuda Auditorium - Tokyo University 4


旧・公衆衛生院

建物の内部は、無料で見学できるスペース、有料の常設・企画展スペース、カフェなどの商業スペースそれと子育て支援や児童クラブなどに分かれています。

エントランスは建物の2階部分になります。
まずは1階に降りて下から順番に見学してみましょう。

1階にはカフェと港区内の公立学校の歴史紹介スペースがありますが・・・
中央ホールはフロアがガラス! いきなりこんなものがさりげなく展示されています。

昔は電気の品質も悪く電灯だけでは地下の照度が確保できなかったので、地上(地下室からなら天井)をガラスにして採光していたのでしょう。

1階には八芳園がプロデュースするベジタブルカフェが入っています。
公衆衛生院時代の食堂の跡地をカフェとして再利用しているのですね。

腰壁に貼られたタイルは ”泰山タイル” のようです。

このカフェについては別記事で紹介しています。

カフェの隣りはいきなり白眉と言える港区の小学校と中学校の歴史系統図。
こちらは小学校の変遷図。

昭和期の港区の人口はそれほど変動がなかったので落ち着いていますが、平成に入ってから統廃合が進んでいるのが分かります。

こちらは中学校。

みなさんの母校は今どうなっていますか?



トマソンの宝庫

戦前の建築物を現代の公的施設で使うには耐震、防火、バリアフリーなどクリアすべきハードルがたくさんあります。
この旧公衆衛生院から郷土歴史館へのコンバートにあたっても苦労があったようで、その痕がいわゆるトマソン(Wikipedia)として残されています。

上半分だけが見えているドア。もちろん開閉はできません。

なんでこうなっているかと、各階のトイレが廊下から数段下がったところに設置されているから。

ここが数段下がったところにある旧トイレ。
ちょっと汚いですが、かつて便器が設置されていたことが判る跡が残っています。

今はバリアフリー化されたトイレがあり、トイレのフロアまで降りられる車椅子用エレベーターが設置されています。

ちなみにこれはかつての旧トイレに設置されていた水洗トイレの注意書き。
1938年から水洗トイレだったのですね、さすが公衆衛生院。

内容は
・柔らかいちり紙を使い、硬い洋紙や丈夫な日本紙を使わないこと
・便器の中にタバコの吸殻、ボロ布など詰まるものを捨てないこと
・使用後は手で取っ手を下げる。足で踏んではいけません。
今と同じですね!

旧講堂へのアプローチ

さてひと通り館内を探索したら4階へ登ってみましょう。

ここは講座室のドアや換気口。
四角な感じが戦前を感じさせてくれますね。

少し進むとエレベーターの跡。これは新しいものに交換するとお金もかかるし景観も台無しなので敢えてそのまま残しているのでしょう。

エレベーターの操作ボタンです。基本的に現代のものと変わらないのですね。

注意書きには
・この釦(ボタン)を押せば乗籠が来ます
・乗籠が止まってから扉を開けて乗ってください
・運転中は釦を押しても無駄です

これもだいたい現代と同じような注意書きですが、それにしても、”無駄です!”
動き出してから押しても止まりませんという意味でしょうか・・・



旧講堂

4階をいろいろ探索しながら建物の西南の端に近づくと・・

前方に広い部屋が見えてきます。
これが旧講堂です。

たぶんこの建物は外観とこの講堂が最大の見所だと思います。

後方からの眺めです。

机や椅子の保存状態は良いのですが、でも座ったりするのはNGです。

大きな黒板、今も時を刻む時計。

ここで研究や論文の発表、あるいは講師を招いての講座などが開かれていたのでしょう。

演台中央の時計周りと、左右に陶版のレリーフが飾られています。

黒板の前(教壇には上れません)から後方を見るとこんな感じ。

旧公衆衛生院の建物の中で一番オオォっとなったところです。


ネゴ・ゴシックな外観やこの旧講堂からはどうしても権威主義的な匂いを感じてしまいますが、それもゴシック建築の目的でもあるので、ここは素直に歴史として楽しんでおきたいですね。

建物の紹介だけでいっぱいになってしまったので、肝心の郷土歴史館を紹介するスペースが無くなってしまいました!
郷土歴史館については続く後半で!

この港区立郷土歴史館へのアクセスですが、とっても簡単です。
地下鉄白金台駅の2番出口を出たら右へぐるっと回ればもう入り口です。

都営/東急バスの白金台駅バス停からもすぐそばです。

港区立郷土歴史館

港区白金台 4-6-2
休館日:毎月第3木曜日、年末年始
開館時間:9:00〜17:00 (土は20:00) 


 
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