飯倉の交差点にそびえ立つ黒く円筒形の怪しいビル、それがノアビルです。
15階建てでそれほど高いビルではありませんが桜田通りの坂の頂上付近に位置しているため、どの方向から見ても実際以上に高く見えます。
そのため1974年に完成してから、場所のわかり易さと外見的な特徴からこの場所のランドマークとして機能しています。
ただ実際はテナントに飲食店もない単なるオフィスビルで一般の人が入る機会もまずないことから、誰もが知っているけどそれが何かを知らないミステリアスなビルとして知られることが多いようです。
フィジー大使館
ノアビルのテナントのうち一般人が行くなら「在日フィジー共和国大使館」のある階が最適です。
もちろん大使館の中には用件がなければ入れてもらえませんが、大使館のあるフロアのロビーにはフィジーの観光資料などが置かれているので、それを取りに自由に行くことができます。
これはフィジー大使館の来客帳ですね。
外側から見ると窓がほとんど無いように見えるノアビル。それが逆にミステリアスな、秘密結社の基地のような雰囲気を醸し出しているのですが、でも当然窓はあります。
アメリカンクラブに元麻布タワー。そして遠くには富士山も見えます。
15階建てなので上層階はさすがに高さのある景色を眺めることができます。
そして、この窓のある側から外を見ると。ノアビルの形状が実はかなり複雑であることが判ります。決して単なる円筒形のビルではない!
アーチだらけのノアビル
交差点側からノアビルの入口を見てみると・・・
レンガ造りのアーチ型入口。
ここから御影石の階段を登りドアを開けて中に入ります。
ここで後ろを振り返ってみましょう。
アーチはそのままですが、外の景色が見える! ・・・でも何かおかしい・・・
種明かしをすると、アーチ型に空いた部分からは外の景色がそのまま見えていますが、アーチの左右の部分はガラスに反射して外の景色が左右対称で見えています。
黒っぽいガラスを使ったことで外との明暗差によってはほどんと鏡のようになるからですね。
ビルの中にも入るとまたこのようなアーチ型が現れました。
しかし、1974年という時代にこのような凝った、今でも異形と認識されるデザインがされていたのはすごいですね。
白井晟一
このノアビルを設計したのは白井晟一(しらい せいいち)という建築家です。
独特の感性が特徴で決して主流ではない異端の建築家かもしれません。
都内では松濤にある「渋谷区立松濤美術館」も白井晟一が設計を手掛けたことで知られています。
こうして松濤美術館の入口とノアビルの入口を並べてみると、アーチや石と金属の組み合わせなどその類似性がよくわかると思います。
このビルの前を歩いて通りかかっても不思議なビルだなぁくらいにしか思いませんが、実はその不思議さも調べてみるとわけがあるのですね。
時には会社の人の仕事のお邪魔にならない程度にノアビルを探検してみるのも面白いかもしれません
ノアビル
港区区麻布台 2-3-5