用途未定な現代のパンテオンを目指した「紀尾井清堂」

紀尾井清堂

紀尾井町の紀尾井坂と紀尾井町通りの交差点角に2020年頃に出現した不思議な建物。

これは「紀尾井清堂(きおいせいどう)」と言う名で一般社団法人倫理研究所の所有する建物で、「銀座線渋谷駅」、紀尾井町近くの「とらや 赤坂店」あるいは練馬と安曇野の「ちひろ美術館」で有名な建築家 内藤廣の設計によるものです。

▲赤坂見附からニューオータニの前を過ぎて紀尾井町通りを登っていくと目に入るガラス張りの四角い建物。しかも外のガラスと内側のコンクリートの間に階段があったりして思わずこれは何だとなりますね。

さらに良く見ると四角い建物が浮いているようにも見えますからますます不思議です。


そしてもっと凄いのが、この建物は ”用途未定” なんです。というのは、施主である倫理研究所からの「思ったように造ってください。機能はそれにあわせてあとから考えますから」という依頼に応えて内藤廣が設計したから。

内藤廣が考えたテーマとしては「パンテオンのような常識に縛られない魂を揺さぶられるようなもの」というもの。もうこうなると建築というより一種のアートとしてこの建物が建てれたようなものです。

この紀尾井清堂、本来は法人の建物ですから外部の人が中に入ることはできないのですが、今回内藤廣建築設計事務所の見学会に参加することができました。外観も十分斬新なものですが内部はさらに凄かったのでレポートします。


紀尾井清堂の1階

見学会はまずは1階から。

▲四隅にある根本が四角形で上部が六角形になる不思議な柱

▲この四隅に建つ柱4本で建物全体を支えているのです。

特に紀尾井町通り側から見ると四角い建物の下がスカスカでまるで浮いているようにも見えるんですね。

また床と壁のランダムな色と形のタイルにも注目です。

これは石州瓦を焼く時の焼成窯で棚板を再利用したもの。通常は一定期間使用したら廃棄する素材だそうです。それで釉薬の付着具合や形状がまちまちなんですね。


紀尾井清堂の内部

2階から上がコンクリートの四角い建物部分になります。

▲内部は2階から5階まで4フロア分が吹き抜けになっていました!

天井部分はトップライトになっていて、しかも開閉式。

そして3階から5階までの各フロアは回廊になっています。

4フロアあるけど大きな吹き抜けとトップライト、各階は回廊だけ。なんとも贅沢な造り。本当、どのように使うのだろうかと心配になってしまいます。

▲各階を結ぶ階段。

トップライトもよく見ると下部は四角いけど開口部は楕円という手の込んだ作りだということが分かります。

▲3階から見るなんとも荘厳な大空間。

そしてなんの機能もない用途未定の空間なのに逆に機能美を感じるところが不思議です。

▲最上階、5階からの内部の眺め。

不思議な空間感覚をもたらすトップライトの造形など、見ているだけで時間が経つのも忘れてしまいそうです。

▲吹き抜けの底、2階からもう一度上を見上げてみたところ。

やっぱりトップライトの効果が絶大ですね。

▲トップライト、階段、壁の造形。

直線ばかりを使った空間ですがなぜか暖かみがあるのは素材と光の関係を計算し尽くしているからでしょう。


紀尾井清堂の外観

外から見ただけで不思議な建物感を醸し出している要因はそのガラス。

▲建物自体はコンクリート打ちっ放しなのですが、その周りをさらにガラスで囲っています。

しかも建物のコンクリートとガラスの間に空間が空いていて、このような階段まで設置されています。

知らずに(いや知っていても)この階段を見たらギョッとしますよね。

▲これがその階段。3階と4階を結ぶ木製の普通の階段です。

でも内部にも同じように階段がありますから、建物の外側にも階段を設置する必要がありません。良く言えば ”万が一のための予備階段”、悪く言えば ”無用の長物”。

▲ただこの階段からはガラスの様子を仔細に観察することができるので、建築好きの人にはありがたい存在だろうと思います。

こうして見るとガラスの間に隙間が空いているんですね。冬は隙間風が入るし、風雨の時は雨が入り込みそうです。

▲紀尾井清堂の本当の入口は紀尾井坂側の2階の部分にあります。

地上から2階に上がる部分の階段は逆にガラスの外側に設置されています。階段部分からガラスの内側、外側を仔細に観察することができるのですね


紀尾井清堂の場所と行き方

赤坂見附から新宿通りへ抜ける紀尾井町通り。その紀尾井坂とのT字交差点角が紀尾井清堂です。

向かいは「AUDI(アウディ)」。”六本木のポルシェ” で親しまれていた飯倉片町の角地にあったAudiが移ってきています。

▲赤坂見附の駅から徒歩10分弱くらい。

逆に麹町の駅から紀尾井坂を下ってくれば徒歩5分くらい。そちらの方が近いと思います。

▲とにかく近くまで来れば、この全面ガラスに覆われた四角い建物が否応なしに目に留まると思います。

外観を見るだけでも楽しい紀尾井清堂。内部の見学会は不定期に開催されているので内藤廣事務所のサイトなどを定期的にチェックされると良いでしょう。
(今後も開催されるかどうかも含めて日程未定です)

▲紀尾井清堂から紀尾井町通りを見たところです。

右側は「ホテルニューオータニ」。左側は清水谷公園とその先は「東京ガーデンテラス紀尾井町」。かつて”赤プリ” の通称で親しまれたあそこです。

施設名 紀尾井清堂
住所 千代田区紀尾井町 3
最寄駅 赤坂見附駅


紀尾井町

紀尾井町というのは紀州徳川家、尾張徳川家それと井伊家の屋敷があったので紀尾井町。歴史を感じさせる名前ですね。

▲紀州徳川家があった場所は今では紀尾井町ガーデンテラスとこの「清水谷公園」になっています。

この清水谷公園は都心のど真ん中とは思えないほど緑が残っていて、紅葉の季節には色づいた紅葉が楽しめます。

▲紅葉はこんな感じ。

向こうに見えるのはニューオータニ。かつて井伊家の屋敷があった場所になります。

▲また明治の元勲 大久保利通が暗殺されたのもこの付近らしく、今はその記念碑が建てられています。

紀尾井町ガーデンテラスやニューオータニは利用されることも多いと思いますが、もう少し先まで足を伸ばして清水谷公園で緑を楽しんだり、紀尾井清堂の不思議な建物を見学するのはどうでしょうか。

紀尾井清堂 基本情報

施設名 紀尾井清堂
住所 千代田区紀尾井町 3
最寄駅 赤坂見附駅

 

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