建築家ナイジェル・コーツ/Nigel Coates
西麻布の交差点のホブソンズから外苑西通りを広尾方面へ行った一つ目の交差点の角に建つ、やたらと目につく建築をご存知でしょうか。
これはイギリスの建築家ナイジェル・コーツ/Nigel Coates設計の建物なのです。
この写真をみて、ああ!となる人もいらっしゃるでしょう。
The Wall と Art Silo
この建物、実は2つの建物からできています。
ビルとビルの間に向こう側が見えるのがお分かりでしょうか。▼
右側の箱型のビルがThe Wall(ザウォール)、左側のてっぺんにパラボラアンテナのようなものがついてる塔型の建物がArt Silo(アートサイロ)です。
どちらもナイジェル・コーツ設計です。
竣工はThe Wallが1990年、Art Siloが1993年です。どちらもバブル真っ只中に完成したバブルの遺産のような建物です。
ナイジェル・コーツは今でも建築家、デザイナーとして活動しています。
建築家としては1986年竣工した札幌の「ノアの箱舟」がデビュー作です。この建物は現在も居酒屋として営業しており、訪問することが可能です。また、この店のためにデザインしたノアチェアはロンドンのV&Aミュージアムのコレクションとなっています。
しかし残念ながら、ノアチェアはもう店では使用されていないようです。
すでに30年以上建っていますので仕方のないことです。建物が現存するうちに一度訪れてみたいと思っています。いつになるかな。
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The Wallのアートワーク
さて、それではThe Wallをみていきましょう。当初はバーなどの飲食店などが多く入っていたようですが、現在はオフィス使用で、ゲーム制作会社が入っており、地下だけはジムのようです。こんなビルのオフィスに毎日通勤してる人がいるのですね。どんな気分なんでしょう。毎日の事だと慣れてしまっているのでしょうけれど。
1Fの正面には、グレイソン・ペリーのアートワークがあります。▼
このアートワークは2Fまで続いています。
一番上には人物が両手を広げるポーズで下をみています。
その体にはさらにたくさんの人物や動物が描かれています。顔が人間で体が動物、またその逆など、ストーリー性のある立像です。
下から見るとめちゃくちゃ怖いです▼
テラコッタでできたこの作品は、竣工当時は当然なかった保護のガラスケースに現在は覆われているので屋外に近い場所ですが、保存状態はとても良いようです。
地下への階段の作品も竣工時にはなかったガラスで保護されています。アートに手厚いですね。▼
この作品の作家グレイソン・ペリーは1960年イギリス生まれ。
現代社会を風刺した陶芸やタペストリー、彫刻、版画などを手がけるアーテイストです。
これまで大英博物館やサーペンタイン・ギャラリー、日本では金沢21世紀美術館で個展を開催するなど、国際的に活躍するアーティストです。
また、ターナー賞作家であり異性装者としても知られています。つまり女装ですね。
階下から作品を眺める様子です。とても日本のオフィスビルとは思えないですね。
The Wallのアイアンワーク
階段室の照明もかなり凝ったアイアンワークです。この照明はおそらくナイジェル・コーツによるデザインなのでしょう。
築30年以上建っていれば普通のオフィスビルなら劣化を感じるものですが、このビルはそもそもが中世の趣があるので、古さがいい味になっていて劣化には感じられません。
もちろん、当時相当な予算で建てているはずですから、やっぱりいい建材を使えば、劣化ではなく味になっていくということでしょうか。いずれにしても丁寧なメンテナンスあって成り立つ話です。
外苑西通りからも見える外壁の装飾は、人体をデザインしたアイアンワークが目をひきます。
かなりの作り込みがされています▼
これ、ここで溶接しているのでイギリスから職人が来て設置しているかもしれませんね。▼
上部についている時計。毎日見てみましたが、ずっと同じ時刻を指しているのでおそらく機能していません。▼
鐘の装飾です。潤沢な予算で作られているので本当に鳴りそうですね▼
裏側にも装飾がなされていますね。▼
調べてみたらノアチェアだけでなく、The wallの模型がロンドンのV&Aミュージアムのコレクションになってるではありませんか。
まだArt Siloが建ってないThe wallだけのマケットですね。
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Art Silo
では、横のArt Siloをみてみましょう。
8階建で1フロアに1軒のテナントが入っているようです。
メッシュの扉は開閉可能なようで、フロアごとに開いてたり、閉じていたりしますね▼
こちらはカラオケ店やバーなど飲食店が入っています。
正面にエントランスがあり、その奥にエレベーターがあります。
天井が高くて非常に凝った内装になっています▼
1Fは完全に共用部のみですからやっぱり贅沢な作りですね。
しかし、正面壁面の上部からはみ出ている配管はなんでしょう?当初はなかったものなんでしょうね▼
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夜のThe WallとArt Silo
The WallもArt Siloも夜になるとまた違った表情を見せます。▼
外観を照らすだけの装飾としての照明が結構な数量設置されています。
やっぱり夜も贅沢な作りでした。▼
ナイジェル・コーツにとってのデビュー作のある日本のこの二つの物件はきっと、潤沢な予算があって、相当凝ったことができた物件だったでしょう。
点灯したアイアンワーク照明▼
ナイジェルコーツにとって、音楽ホールの後にシェアフィールド大学のハブとして利用されている施設やロンドンのジェフリーミュジアムと共にこの西麻布の二つのビルは代表作となっています。
現在はこのような大型の建築を手掛けることは少ないようですが、95年から2011年まで長らくロンドンの国立の美術学校RCA(ロイヤルアカデミーオブアーツ)の建築学科教授をつとめ現在は名誉教授となっています。
西麻布に来たら是非足を止めてみてみてください。物凄い潤沢な予算のあった90年代バブルの香りを感じることができるはずです。
The WallとArt Silo