東京都庭園美術館「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」ー 旅にまつわる異色の展覧会

旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる

白金台の東京都庭園美術館で”旅”をテーマにした展覧会「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」が開催されています。

COVID-19のパンデミックで ”旅” が縁遠くなってしまって3年。それもやっと明かりが見えてきたところで、旅が人々の人生にどのような影響を与えてきたかを振り返り、現代のアーティストたちが ”旅” を解釈した作品たちとコラボするという、異色かつ大胆なコンセプトの展覧会です。

秋のアートシーズンに現存する世界一美しいアールデコ建築東京都庭園美術館を会場に開幕したこの展覧会、期待が大きいせいか開幕初日からかなりの混みようでした。

関係者向け内覧会にも参加し特別に許可をいただいて撮影した作品を含めて紹介します。

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会場の東京都庭園美術館

▲旧朝香宮邸として1930年代、アールデコの時代に建設された貴重な建物です。旧朝香宮邸を改修した本館、杉本博司を迎えて建設された新館が主な展示会場。さらに 西洋庭園と和風庭園を備えているところが 「庭園美術館」たるところです。

▲玄関のルネ・ラリックのガラスレリーフです。ルネ・ラリックやアンリ・ラパンなどアールデコ期のフランスの作家たちからの協力を得て建設された建築物なので、至るところの調度品や意匠など感心するばかりです。

戦後は外務大臣公邸、迎賓館などとして使われきた、日本の戦前戦後の歴史が刻まれた建物です。

▲正面玄関からは第一応接室がガラス窓を通して覗けるようになっていて、そこには毎回その展覧会を凝縮したような展示が行われています。今回は中が見えやすく展示されています。

入館前にまず鑑賞し、帰りにもう一度じっくり観ると展示の意図がよりわかりやすいと思います。意外とこの展示に気づかず出入りしているお客さんが多いのでお見逃しなく。


旅と想像/創造

この展覧会は大きく二部構成。

▲”旅” をテーマに、朝香宮夫妻の欧州旅行とアールデコ、人々を旅に誘うカッサンドルのポスター、鉄道蒐集家の中村俊一朗、ファッションデザイナーの高田賢三 など一見脈絡ないような資料展示する部分。

それと”旅” を解釈した現代アートの作家たちの作品展示。

こうした作品や資料が入り混じって展示されているのが刺激的です。

美術館と展覧会での撮影

東京都庭園美術館は原則として本館内の撮影は禁止です。また展覧会も多くの場合は原則撮影禁止、指定された一部作品のみが撮影可能というスタイルを取っています。

今回の「美と創造/想像」展も同様です。また庭園美術館からもいくつか注意事項がアナウンスされているので、ここにまとめてみました。

注意事項

・本展で撮影可能なのは

本館1階 大客室
新館 ギャラリー1

の2ヶ所だけです。それ以外の展示室では展示作品はもちろん、室内も撮影禁止です。

いつもは撮影可能だったエリアにも作品が置かれ撮影禁止になっているので注意してください。
詳しくは会場で配布されているマップを参照してください。

・撮影にそれ以外の注意事項は

同じ場所での長時間の撮影はしない シャッター音を下げる
フラッシュ、レフ板、三脚、自撮り棒、望遠レンズは使用しない
動画の撮影は禁止
撮影機材が落下したり作品に触れる恐れがあるので、展示品の真上からの撮影、身を乗り出しての撮影、極端な接写はしない

です。常識的なことばかりですね。

・撮影以外の鑑賞自体に対する注意事項は

作品、建築、家具、スクリーン等には手を触れない
混雑時の不意の接触にも注意する
要するに荷物はロッカーに入れましょう
傘・日傘の館内への持ち込みはできません
飲料、食料品は展示室内へ持ち込みできません

です。これも常識的なことばかりですね。

本記事には関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影したものが含まれています。キャプションにその旨の記載があるものは、通常は撮影禁止の作品です。

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本館1階 − 大広間

今回の展覧会はいつもの展覧会と動線が変わっています。

最後にクライマックスが来るよう考えられての動線ですので係員や案内板の指示に従って鑑賞しましょう。

関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影しています

▲1920年代初頭、朝香宮鳩彦王がグランドツアーとして欧州に旅立ったところから物語が始まります。

その当時の旅程、旅先から手紙などが展示されている大広間。

ただ、いつもと異なり「旅と想像/創造」展では大広間内は撮影禁止です。

本館1階 − 大客室

その代わり大客室内は室内も作品も撮影可能です。

▲大広間から大客室へは香水塔の周りをぐるっと回って入室する動線になっています。

いつもと違うアングルから香水塔が撮影できるのでチャンスと言えばチャンスですね。

▲大客室は例によって往時の朝香宮邸を再現するようなディスプレイ。

暖炉の上にはカッサンドルのポスター。大広間や2階にはカッサンドルのポスターが数多く展示されています。

▲ルネ・ラリックの「花瓶」。

いつものように庭園美術館の収蔵品から選ばれた作品たちが展示されています。

▲本館で撮影可能なのはここまで。

いつもは大客室に続いて入れる大食堂への扉は閉められています。いったん鑑賞ルートに沿って最後に入室する動線になっています。

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本館1階 − 第一応接室

大広間の隣の「第一応接室」。

正面玄関からも覗けますが、大広間側からはその詳細な様子をうかがうことができます。

関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影しています

▲1920年代初頭ですからアメリカだとローリング・トゥエンティーズ(狂騒の20年代)。大西洋を挟んだパリもジャズやジョセフィン・ベイカーに熱中していた時代です。

そんな時代がこの第一応接室に再現されています。

本館1階 − 小客室

「第一応接室」の隣は「小客室」。

関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影しています

▲四方の壁にはアンリ・ラパンの直筆の油絵が張り巡らされていいます。ずっと壁紙だと思っていたのです、じつは油絵だったとは。

「旅と想像/創造」展では朝香宮鳩彦王ご愛用のカメラ機材などが展示されています。パリで撮影された写真を見ると、当時のパリの様子や自由な生活を楽しむ夫妻の様子がうかがい知れて興味深いです。

▲1920年代初頭ですからアメリカだとローリング・トゥエンティーズ(狂騒の20年代)。大西洋を挟んだパリもジャズやジョセフィン・ベイカーに熱中していた時代です。

朝香宮夫妻、カッサンドル、高田賢三

本館1階の大客室を観終えたら、指示されたルートに従い大広間経由で2階へ。

なお2階は全面的に撮影禁止です

関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影しています

▲2階へ上がる階段。階段を上りきったところは「二階広間」です。

関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影しています

▲2階では100年前に朝香宮夫妻がヨーロッパからアメリカを旅した記録を観ることができます。英国貴族の子息たちが欧州大陸を旅した”グランドツアー” の近世日本版として捉えてみた展示です。

また20世紀前半のヨーロッパの旅行ブームにひと役買っただろうカッサンドルの豪華客船や列車のポスターなども。

関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影しています

▲圧巻だったのは鉄道蒐集家中村俊一朗氏の展示。

20世紀前半ですから日本も世界も旅の主役はまだ鉄道だった時代。その鉄道に関するありとあらゆるものを蒐集した人のようです。今で言う鉄オタの元祖みたいな人のプライベートルームが再現されています。鉄分が高めの人は絶対見逃せないと思います。

そしてファッションデザイナーの高田賢三の展示。船で渡仏したので、香港、ベトナム、シンガポールなど様々な国に立ち寄ることで異文化に触れ、それが後のKENZOのフォークロア・ルックに繋がったという解釈での展示です。ただこれは個人的にはどうかなぁと思います。文化大革命末期に呑気にチャイナルックとか、1980年といえばすでに欧米では文化的窃盗が問題になっている時期ですから・・・

福田尚代、宮永愛子、さわひらき、相川勝

本館では現代の作家の展示も行われています。

関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影しています

▲おすすめは2階の書庫と殿下居間を使って展示されている福田尚代(ふくだ なおよ)の作品たち

関係者向け内覧会で特別に許可をいただいて撮影しています

▲宮永愛子は新館ギャラリーで大きくフィーチャーされていますが本館2階にも作品があるのでお見逃しなく。

そして本館1階の大食堂では「さわひらき」の映像作品が投影されています。現代の ”旅” に欠かせない飛行機の映像、庭園美術館で撮影した映像など全部で6本、45分です。

これがあるので通常の庭園美術館での展覧会プラス1時間をみておいた方がよいです。

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新館のギャラリー

本館の次はお隣の新館へ移動。 新館にはミュージアムカフェの「cafe TEIEN」とミュージアムショップもありますが、まずはギャラリー1へ。

宮永愛子

話題のアーティスト宮永愛子の作品、本館2階にも展示されていますがメインは新館ギャラリーに展示されています。

▲展示されているのはナフタリン製の旅行かばんたち。

”旅” にふさわしいテーマですね。

▲ライティングも含めたインスタレーションが素晴らしい。

久しぶりに大きなスペースで作品を見ました。

▲かばんの中には鍵が埋め込まれています。

旅行かばんと鍵。単に ”旅” がテーマだけでもなさそうです。

栗田宏一

新館ギャラリーでのもう一人のアーティストは栗田宏一。

日本各地を訪ね歩きその土地の ”土” を採取する活動をしているアーティストです。

▲16X16の256箇所の土。

以前観た栗田宏一の作品はこの数倍あるサイズでした。パンデミックの影響でこうした個人的な ”旅” さえもままらないという意図もあってのサイズなのでしょう。

また約1年にわたり日々採取した土を絵葉書に貼り付けて庭園美術館へ郵送する「Walking Diary」という、まるで河原温みたいな作品も展示されています。

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ミュージアムカフェ

新館のミュージアムショップではポストカードなどのグッズなどが販売されています。

また例によってミュージアムカフェではコラボメニューも登場しています。

▲「1920 旅の便り」という旅行鞄をイメージしたケーキです。

そろそろテラスでのカフェも気持ち良い季節。

朝香宮夫妻が世界一のアールデコ建築「庭園美術館本館」を所望したきっかけとなった欧州視察旅行。その ”旅” を軸に、その当時の ”旅” の様子をカッサンドルで想像したり、現代の”旅”から作家たちが創造した作品を鑑賞したり。

普通の展覧会とはかなり変わった切り口の構成と展示で、この秋見逃せない展覧会の一つです。

2022年秋の夜間開館

11月も中旬になれば庭園美術館敷地内や日本庭園の紅葉も見頃になり、それに併せて夜間開館が実施されます。

2022年秋の夜間開館は11月18日(金)、19日(土)、25日(金)、26日(土)それと12月2日(金)、3日(土)です。

この6日間は夜20時まで開館していて、しかも日没以降は庭園のライトアップも行われます。美術館と夜の紅葉を同時に楽しめるチャンスです。

展覧会のチケットがあればそのチケットで庭園にも入場できます。ただ12月2日と3日は展覧会が終わっているので庭園だけの見学になります。

旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる展 基本情報

名称 旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる
会場 東京都庭園美術館
会期 2022年9月23日(金) 〜 11月27日(日)
時間 10:00 − 18:00
入館料 一般 1,400円、大学生 1,120円、中高生・65歳以上 700円
予約 オンライン事前予約制

東京都庭園美術館 基本情報

名称 東京都庭園美術館
住所 港区白金台 5-21-9
最寄駅 白金台駅、目黒駅
休館日 月曜日
時間 10:00 − 18:00 (土日祝は17:30まで)
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